ボイトレ(ボイストレーニング)を重ねるうえで、「ビブラート」の習得は重要です。思い通りに出せるようになると、ロングトーンも美しさを増します。しかし、「なかなかマスターできない」と悩むこともあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ビブラートの基本的な仕組みから練習方法まで詳しくご紹介します。うまく出ないときの対処法にも触れているため、現在練習中の方にも役立つでしょう。いくつかの項目に分けて、状況に応じたポイントをピックアップします。
ボイトレでビブラートを習得しよう!
実際の練習方法を知る前に、まずはビブラートに関する基礎知識を蓄えておきましょう。「なぜビブラートが出るのか」「どのような場面で使うのか」といった理解も大切です。ボイトレの効果や歌の表現力にも注目しながら、押さえておきたいポイントを解説します。
ビブラートとは?
ロングトーン(長音)を発したとき、波打つように聞こえるのが「ビブラート」です。一定の音程で大声を出すときとは異なり、細かく上下するように感じられます。人によって得意・不得意はあるものの、発声できる範囲であれば比較的操りやすいといえるでしょう。感覚をつかむと、幅広い音程で自由に出せるようになります。
ビブラートの原理
ビブラートを発声するときに使う体の部位は「横隔膜」です。肺から出る空気の量を調整することで、声量と音程をコントロールしています。体の中にあるため感覚がつかみにくいかもしれませんが、マスターできると美しいビブラートの発声が可能です。ほかに、以下の原理を活用できる点も把握しておきましょう。
・喉:喉の揺れを活用する
・顎:顎を上下に揺らす
横隔膜でのビブラートが困難な場合、喉や顎を使う練習方法もあります。肺から出る空気の量ではなく、喉や顎を動かして音そのものを揺らす仕組みです。横隔膜でなくても十分にビブラートを利かせられるため、ボイトレに取り入れてみても良いでしょう。
ビブラートを使う理由
多くのアーティストがビブラートを活用するのは、「表現力が高まる」という理由が挙げられます。単純にひとつの音を長く伸ばすよりも、波を打たせた方が感情も表面化しやすくなるためです。楽器では自由なビブラートを利かせにくいため、人による歌唱ならではの魅力ともいえるでしょう。
また、少し音程をずらすことで「正しい音に調整しやすい」といったメリットもあります。ひとつの音程を徐々に修正するよりも、ビブラートを出しながら戻した方が自然な調整が可能です。
ビブラートそのものが歌全体のアクセントになるため、第三者に対してアピールするきっかけにもなるでしょう。このように、表現力だけでなく複数の観点からメリットを実感できます。
ビブラートの種類
大まかな種類として挙げられるのは8種類です。それぞれ曲の傾向や特徴はありますが、「どのような曲に活用するか」は歌詞や表現力によっても異なります。
タイプ |
音の変化 |
特徴 |
ボックス型A |
声を小刻みに、早く揺らす |
声が震えているように聞こえる |
ボックス型B |
ボックス型Aよりも波が緩やか |
J-POPに多いビブラート |
ボックス型C |
ボックス型Bよりも波が緩やかで、リズムも遅い |
演歌に多いビブラート |
上昇タイプ |
徐々に音程を上げる |
次の高音につなげやすい |
下降タイプ |
徐々に音程を下げる |
次の低音につなげやすい |
縮小タイプ |
音(波)の振幅を少しずつ縮小する |
曲の終盤などに活用しやすい |
拡張タイプ |
音の振幅を少しずつ大きくする |
サビの前など、盛り上がりで活用しやすい |
ひし形タイプ |
縮小タイプと拡張タイプのミックス型 |
表現力を高めやすい |
自宅で出来るボイトレのビブラート練習方法
ビブラートが習得できず悩んでいる方は、呼吸方法のトレーニングや簡単な発声練習からスタートしてみましょう。横隔膜を意識することだけでなく、腹式呼吸や共鳴といったテクニックも重要です。自宅でも実践しやすい方法を3パターンピックアップし、練習のポイントや意識したい動きなどを解説します。
腹式呼吸をする
練習の種類を問わず、ボイトレを続けるうえで重視したいのが「腹式呼吸」です。普段胸式呼吸をする方も多く見られますが、腹式呼吸を習得することで横隔膜もコントロールしやすくなります。
・リラックスした状態で正面を向く
・腹部に両手を当てる
・息を吸うとき、腹部を膨らませる
・腹部をへこませながら、ゆっくり息を吐く
感覚がつかみにくい場合は、仰向けの状態で実践するのもおすすめです。胸式呼吸では腹部の動きが反対になるため、「吸うときに膨らませる」を意識して続けてみましょう。
声を響かせる
腹式呼吸と同様に重視されるのが、口の中や喉を意識した「共鳴」です。全体で3つの部位を活用することで、表現力の高い声を発しやすくなります。以下の3点を押さえておきましょう。
・口腔:口の中
・鼻腔:鼻から喉の間にある空間
・咽頭腔:声帯の上
これらをしっかり響かせるためには、腹式呼吸の習得が必要です。共鳴と同時に実践しにくい場合、どちらか一方に集中しても問題ありません。
可能であれば、まずは腹式呼吸からマスターした方が良いでしょう。無意識化でもできるようになれば、声を発するうちに共鳴ができることもあります。舌や顔を動かす筋肉のトレーニングもおすすめです。
体の部位別にビブラートを出す
腹式呼吸の感覚が分かってきた後は、喉・顎・横隔膜の部位別に練習してみましょう。最終的には横隔膜をマスターしたいものですが、初期段階は喉と顎がメインでも問題ありません。
部位 |
動き |
ポイント |
喉 |
喉を開いた状態でビブラートを出す |
喉は開いた状態を維持 |
顎 |
発声しながら顎を上下に動かす |
顎に力が入らないよう注意 |
横隔膜 |
腹式呼吸のまま横隔膜の動きを意識する |
腹部に手を当てて、声量と横隔膜の連動性を確認 |
音程の変化が感じられないときは、基準音を決めてから実践するのもおすすめです。ひとつの音を決定した上で、小さく上下させるイメージで発声してみると良いでしょう。余計な力が入らないよう意識できると、適切な体勢と歌い方を習得しやすくなります。
きれいなビブラートを出すポイント
コツが分かると便利に使えるビブラートですが、「発声はできるが思い通りにコントロールできない」ということもあります。美しい声に近づけるためには、ロングトーンの安定化や振幅の調整といったテクニックも必要です。理想のビブラートに少しでも近づけるよう、ボイトレに活かしやすいポイントを3つ押さえておきましょう。
安定したロングトーンにする
音を振動させる前に重要なのは、長く安定した声です。振幅が十分であっても、基準の音がずれると全体が不安定に聞こえます。途中で音が途切れたり、基準音が変わったりしないよう、一定音を長く出し続けるトレーニングも実践してみましょう。思うように発声し続けられない場合は、肺活量を上げるために腹式呼吸の練習を取り入れるのもおすすめです。
一定のリズムで音を揺らす
音を揺らすだけではきれいなビブラートにならないため、一定のリズムを意識してみましょう。音の揺れる幅が一定になれば、長い時間発声してもぶれにくくなります。
上昇タイプや下降タイプといったパターンと組み合わせると、さらに表現力の高いビブラートに近づくでしょう。リズムの変化が分かりづらい場合は、録音して聞いてみるのもおすすめです。
一定の音程の幅で揺らす
音の揺れと同時にチェックしておきたいのが、音程の変わる幅です。終始同じ揺れで発声できると、きれいで安定感のあるビブラートに近づきます。
ビブラートを録音し、一定音で継続できる時間やぶれやすい音を確認するのもおすすめです。慣れてくるとコントロールしやすくなるため、ひし形タイプなどを応用しても良いでしょう。
ボイトレでビブラートがうまくできないときの対処法
「何度練習してもうまくできない……」という方は、ビブラートに限定しないトレーニングを実践するのもおすすめです。自分自身で判断できない場合、機械での判断が可能なカラオケやアプリを活用しても良いでしょう。本格的なボイトレを希望するのであれば、プロの指導を受けるのもひとつの方法です。
ドギーブレスをする
腹式呼吸や共鳴の感覚がつかみにくい場合は、「ドギーブレス」と呼ばれる練習を実践してみましょう。声を発さず、小刻みに息を吐き出す方法です。舌を出して息を切らす犬をイメージすると、分かりやすいでしょう。
このとき、腹部に両手を当てて横隔膜の動きを確かめます。ドギーブレスからロングトーンに変化させていくと、ビブラートの出し方が分かるかもしれません。一度では習得しにくいため、複数回繰り返してきれいなビブラートに近づけていきましょう。
カラオケなどのアプリで練習する
気軽に足を運べるカラオケがある方は、採点機能などを活用してビブラートの長さや音程をチェックするのもおすすめです。
また、近年では本格的なカラオケアプリも複数登場しています。ビブラートを認識する機能があれば、自宅でも練習の成果を客観的に確認できるでしょう。キーやテンポを調整できると、練習曲の幅も広がります。
レッスンを受ける
本格的な練習を希望する方は、レッスンの受講も視野に入れてみましょう。歌のプロから教われるため、独学で収集しづらい情報やテクニックも獲得できます。今後、プロミュージシャンとして活動したい方にもおすすめの方法です。
ボイトレで表現力がついたら腕試しをしてみよう!
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まとめ
ビブラートを習得できると、普段歌っている曲も思い通りに表現しやすくなります。より魅力的な歌声に近づけるためには、ボイトレだけでなく原理や種類の理解も大切です。幅広い視点から知識を深め、無理のない範囲で練習を重ねましょう。
本格的なアーティスト活動を希望している方は、ぜひMUSIC PLANETのオーディションへご応募ください。合格後もしっかりサポートできるよう、充実の体制を整えてお待ちしています。